ローザンヌ国際バレエコンクール

hozan2007-04-30

第35回ローザンヌ国際バレエコンクールの録画を見た。
若手バレエダンサーの登竜門。2007年2月4日スイスのローザンヌボーリュ劇場で開かれた。
今回は168名の応募があり、ビデオ審査で絞り込んだ15才から18才までの65名の中から選ばれた12名によって決選大会が開かれた。なんと、男7名、女5名。
決選は3回のダンスによって総合的な評価がくだされる。
1.クラシック・バリエーション2(女性7、男性9作品の課題の中から選択。振り付けのバージョン、音源自由。衣装は稽古着)
2.コンテンポラリー・バリエーション(ネザーランドダンスシアターの芸術顧問イリ・キリアンの振り付け)
3.クラシック・バリエーション1(男女各5作品の中から選択。振り付け、音源は指定のものを使用。衣装は自由)


ダニエル・ヴィスカヨ・マルティン(スペイン、17才、男)
1.くるみ割り人形
2.サラバンド(バッハ)
3.ラ・シルフィード


クセーニヤ・オフシャンニク(ベラルーシ共和国、17才、女)
1.コッペリア
2.27分52秒(ディルク・ハウブリッヒ)
3.ラ・バヤデール


チェン・タオ・ユエン(中国、16才、男)
1.ジゼル
2.ブラックバードグルジア民謡)
3.ジゼル


吉山シャール・ルイ・アンドレ(日本、17才、男、静岡県
1.グラン・パ・クラシック
2.27分52秒
3.ドン・キホーテ
コンテンポラリーダンス


キム・チエリ(韓国、16才、女)
1.コッペリア
2.ブラックバード
3.ライモンダ
スカラシップ


テルモ・モレイラ(ポルトガル、15才、男)
1.コッペリア
2.サラバンド
3.ラ・シルフィード
スカラシップ


ディーリア・マシューズ(イギリス、16才、女)
1.ラ・バヤデール
2.27分52秒
3.ラ・バヤデール
スカラシップ


スン・ジャ・ユン(中国、18才、男)
1.コッペリア
2.サラバンド
3.ジゼル


パク・セウン(韓国、17才、女)
1.ジゼル
2.ブラックバード
3.ラ・バヤデール
スカラシップ。彼女が最高得点だったそうな。


ジェームズ・ヘイ(イギリス、17才、男)
1.グラン・パ・クラシック
2.27分52秒
3.ドン・キホーテ
スカラシップ


河野舞衣(日本、17才、女、埼玉県)
1.グラン・パ・クラシック
2.ワン・オブ・ア・カインド(ブリテン
3.ライモンダ
観客賞、スカラシップ。彼女は二位らしい。完璧な河野舞衣と、穴だらけだけどのびのびとした個性で魅せるパク・セウン。残念だけど、もしもこれが漫画なら主人公はパク・セウンの方なんだなあ。


新井誉久(日本、17才、男、山口県
1.コッペリア
2.27分52秒
3.ラ・シルフィード


スカラシップ」は世界一流のバレエ学校へ1年間授業料免除で留学する権利。留学中の生活援助金1万6千スイスフラン(約140万円)支給。
「プロ研修賞」は17才以上のダンサーに適用される、世界一流のバレエ団へ1年間研修生として参加する権利。研修中の生活援助資金1万6千スイスフラン支給。
申し込み時に、「スカラシップ」か「プロ研修賞」の選択をしなければならない。今回、プロ研修賞の受賞はなかった。スカラシップを選択する人が多いってことか。
コンテンポラリーダンス賞」はコンク−ル指定のバレエ講習会に招待参加できる権利。日本の吉山シャール・ルイ・アンドレが受賞したが、たしかに、コンテンポラリーダンスの踊り手として、卓越したものがあったと思う。
「観客賞」は昨年から制定されたもので、劇場の観客が決める。日本の河野舞衣が受賞した。番組の解説者、大原永子(バレエミストレス)も河野舞衣をベタぼめだった。いつもの僕なら「日本人びいき!」と思いかねないが、河野舞衣の、観客にアピールする実力と才能は、本物だと思った。

番組を見ていると、最初のほうは、「うわー!めちゃくちゃうまい!」と感動するが、コンクールが進むにつれて、それぞれの弱点なども見えてくる。勝手な審査員きどりだが、各ダンサーに優劣をつけながら見るのも楽しかった。
たとえば、チェン・タオ・ユエンがクラシック・バリエーションの1も2も「ジゼル」だったのを見て「なんだ、こいつは結局ジゼルしか踊ってないじゃないか」と減点してみたり、
そうかと思うとディーリア・マシューズはクラシック両方「ラ・バヤデール」なのに、踊りがよかったのでちっとも減点しなかったり。実にいいかげんな評価基準で遊んだ。
なお、僕が一番いいな、と思ったのは、コンテンポラリーバリエーションの「27分52秒」で、ディルク・ハウブリッヒの音楽もよかったし、イリ・キリアンの振り付けも面白い。
イリ・キリアンの振り付けは、大原永子も言うように、音符一つ一つに振り付けが入るような難しい踊りで、言わば、ダンスが楽譜をあらわすかのような、不思議なものなのだ。この「楽譜」がダンサーの個性によってぞれぞれ見た印象が変わるのが凄い。これが新人じゃないプロのダンサーによって踊られたなら、いったいどんなに凄いものが見れるのか、と鳥肌がたった。
こんなことなら去年来日したネザーランドダンスシアター見に行けばよかった。
ディルク・ハウブリッヒのCDってあるのかなあ。今度調べてみよう。